長編アニメーションに特化した映画祭は国内のみならず、海外でも珍しい。アニメを共通言語に、「NIIGATA」の名が注目される機会となるに違いない。

 アニメの表現力は国境や文化の壁も超える。映画祭をきっかけに、新潟を世界のアニメ文化の拠点に成長させたい。

 今年で3回目となる新潟国際アニメーション映画祭が15日、新潟市で開幕した。

 20日までの期間中、受賞を競うコンペティション部門の出品作が上映されるほか、来訪する監督らによるフォーラムなど、多彩な催しが予定される。

 目玉の長編コンペ部門は、過去2回を大きく上回る28の国・地域から69作品の応募があり、そのうち12作品がノミネートされた。

 国家間の摩擦や紛争が絶えない中、異なる文化を背景にした各国の作品を新潟で鑑賞できることには意義がある。

 まだ3回目ながら、長編作品数は、アニメーション映画祭として名の通るフランスのアヌシー国際映画祭と並ぶ規模になった。

 海外のアニメ関係者の間でも「ニイガタ」の地名が知られるようになったと話す映画専門家もいる。喜ばしいことだ。

 映画祭は次世代を担う人材育成も理念に掲げている。アニメ作家やプロデューサー、批評家などを目指す若い世代を対象にした「新潟アニメーション・キャンプ」が今年も行われる。

 各国の監督らの特別講義や、制作者との交流などのプログラムが組まれている。夢に近づく貴重な機会になるだろう。新潟の地で刺激を受け、羽ばたいてほしい。

 注目したいのは、新潟にはアニメ文化の素地があることだ。

 水島新司さんや高橋留美子さんら著名な漫画家を輩出し、行政はマンガの街として力を入れてきた。新潟市内はマンガやアニメを学べる専門学校などが立地する。

 東映初代社長で東映動画(現東映アニメーション)を立ち上げ、日本初のカラー長編アニメ映画「白蛇伝」を作った大川博ら礎を築いた先人の存在もある。

 新潟の優位性をもっと生かし、世界的な「アニメの拠点都市」を目指してはどうだろう。

 アニメは国際的に日本を発信する重要なソフトコンテンツであり、産業面でも期待される。映画祭を起爆剤に、産官学の有機的な連携を強化したい。