コメ不足を二度と引き起こしてはならない。本県に深く関わる衆院選テーマだが、論戦の中心になっているとは言い難い。安定供給への道筋が語られるべきである。
高市政権はコメの「需要に応じた生産」を基本とする。供給過剰による価格急落を警戒する業界団体や自民党農林族の意向を踏まえた方針とみられる。
問題は価格である。農林水産省が1月に発表した全国の小売店でのコメ平均価格は、5キロ当たり4千円台だった。
2025年産米は収穫量が多いため価格は下がるとの観測も出ていたが、以前に比べ高い水準が続いている。消費者のコメ離れが懸念される。
政権は、価格を抑える有効策を示せていない。物価高対策が焦点のこの衆院選で、コメ価格の在り方は大いに語られるべきだろう。
本はといえば、コメ不足による価格高騰を招いた「令和の米騒動」は、国が需要量を見誤ったことから起きたものだ。ずさんな農政が露呈した。
朝令暮改にも驚かされた。価格高騰を受け石破前政権が増産を表明して間もなく、高市政権は増産方針を転換した。
政治に振り回される生産者の意欲が心配だ。求められるのは、主食に関する確かな展望である。
与党と主要野党は、農地の基盤整備や新規就農者の育成強化を打ち出した。
農林水産省が発表した2025年の農林業センサス(速報値)で本県は、自営農業を主な仕事としている「基幹的農業従事者」が3万4541人で、前回の20年に比べ25・1%減少している。
65歳以上が前回調査と同水準の75%を占めており、高齢化が続く傾向が浮き彫りとなった。
農業機械や肥料の価格が上昇しており、コスト増による採算悪化が離農の主因とみられる。
所得を向上させ、もうかる農業へと転じる政策が不可欠だ。
各党からは農林水産物の輸出拡大や高付加価値化、流通構造の改革といった案が挙がる。それらをどう進めるのかを候補は具体的に説明してほしい。
自給率向上など食料安全保障の強化は、多くの党が掲げている。昨今の不安定な国際情勢や、収量減を招く気候変動に照らせば、もっともな観点だろう。
足腰の強い農業への展望を重要テーマとして議論するべきだ。
就農者は、中山間地をはじめ、地域の支え手となる人材である。農業支援は、本県の人口流出対策にもつながるものだ。
農政が地域の持続可能性を左右する。地方にしっかり目を向けた政策であるかが問われる。
