ハンセン病への差別と偏見から、隔離先に設けられた特別法廷で行われた裁判手続きの一部が憲法違反とされた。司法関係者の責任は重大である。

 一方、違憲状態での裁判だったにもかかわらず、裁判のやり直しである再審は認められなかった。首をかしげざるを得ない。

 ハンセン病とされた男性が特別法廷で死刑判決を受け、1962年に執行された「菊池事件」の第4次再審請求審で、熊本地裁は裁判手続きは憲法違反だったとの弁護団の主張を一部認めた。

 男性は52年に熊本県内の村の元職員を殺害したとして殺人罪などに問われた。裁判は国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(けいふうえん)などの特別法廷で開かれた。

 特別法廷は、最高裁が法律に基づき、病気や災害など特別な事情を考慮して裁判所の外での審理を認める制度だ。

 ハンセン病が理由の特別法廷は、申請するとほとんど開催が認められた。その割合は、他の病気などと比べ、突出して高かった。

 裁判は誰でも傍聴できる「公開」が原則だ。だが、菊池事件の特別法廷は患者が隔離される療養所などで開かれ、一般市民の傍聴は困難だったとみられる。

 地裁は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反し、裁判の公開原則を定めた82条1項などに違反する疑いがあると指摘した。

 憲法の番人であるはずの最高裁が、被告を差別し、人格と尊厳を傷つけていた。言語道断と言わざるを得ない。

 特別法廷について、地裁は2020年にも元患者による国家賠償請求訴訟で憲法違反との判断を示した。改めて猛省を促したい。

 検察、弁護人も特別法廷に関与した責任は免れまい。

 理解に苦しむのは、地裁が特別法廷の違憲性に踏み込みながら、再審開始を認めなかったことだ。

 決定では「公開法廷で審理したとしても確定判決の証拠関係に変動はない」と指摘し、「憲法違反が確定判決の事実認定に重大な誤認を来すものとは認められない」と結論づけた。

 特別法廷で男性は無罪を主張した。しかし、弁護人は検察側の出した証拠に全て同意し、罪状認否では「別段述べることはない」と語っている。

 この点について、再審請求審の弁護団は、弁護人の援助を受ける権利を定めた憲法37条3項などに違反すると主張した。しかし、地裁は「直ちに違法とまでは言い難い」と退けた。

 特別法廷の書記官は後に、証拠品を箸でつまみ「(男性を)ぼろ雑巾のように扱った」と振り返っている。男性が十分な弁護を受けられていたのか、疑問を抱かざるを得ない。

 弁護団は即時抗告の方針だ。必要な審理を尽くしてもらいたい。