高額献金に苦しみ、自ら命を絶った人や、家庭を破壊された被害者もいる。本来あるべき宗教団体の活動を大きく逸脱していたことは明らかであり、解散命令は当然の結果だ。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する文部科学省の解散命令請求で、東京地裁は25日、宗教法人法が定める「法令違反」を理由に、教団に解散を命じた。

 地裁決定は、献金被害が甚大で看過できず「法人格を失わせるほかに有効な手段は想定しがたい」とし、解散命令は「必要でやむを得ない」とした。

 教団による献金被害は少なくとも1500人超に、約204億円生じたと認定した。被害者数、額とも文科省の主張を全面的に認めたことになる。

 文科省は2023年10月に請求するまでの約1年間、宗教法人法に基づく質問権を行使して集めた資料のほか、170人を超える被害者の証言を集めた。

 被害は遅くとも1980年ごろからあったことや、悩みに乗じて不安をあおる手法が全国的に共通することなどから、不法行為が組織的で悪質だと主張していた。

 解散命令はオウム真理教などに続き3件目となる。注目されるのは、解散要件である「法令違反」に初めて民法の不法行為が該当したことだ。

 過去の2件は、幹部が刑事事件で有罪判決を受けたのに対し、旧統一教会は、高額献金を巡る民事訴訟での損害賠償命令で、大きな違いがあった。

 教団側は、民法上の不法行為が宗教団体の解散事由に該当したことは「日本の信教の自由、宗教界全体に大きな禍根を残す」との見解を表明した。

 しかし、教団の行為が解散要件の「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」であることは、論をまたないだろう。

 地裁の命令を機に、自民党には改めて反省を求めたい。

 議員の選挙応援などで関係を深め、高額献金などの問題を見て見ぬふりをした責任は重い。

 教団側は地裁の決定を到底受け入れられないとし、高裁に即時抗告するとした。

 命令が確定すると、教団は宗教法人格を失い税制上の優遇措置を受けられなくなるが、決着まで時間を要することになる。

 解散命令を受け、新たな被害の抑止になるとの声がある一方で、さらに高額な献金を求めたり、信者が地下に潜り被害が見えにくくなったりする恐れもある。継続的に注視せねばならない。

 忘れてならないのは、被害者の救済や、「宗教2世」を巡る問題などが解決していないことだ。

 被害者には高齢者や生活困窮者が多い。早期救済が図れる実効性のある法整備や、教団の財産の流出防止を進める必要がある。