実態に合わせた見直しは欠かせない。ただし、主食に関する主要なデータである。生産現場に混乱を引き起こさぬよう、丁寧に進めなければならない。

 小泉進次郎農相は、コメの単位面積当たりの収穫量が多いか少ないかの見通しなどを示す農林水産省の「作況指数」を廃止すると明らかにした。気候変動などの影響で実態と合わなくなっているためだと説明した。

 作況指数とともに公表してきた予想収穫量調査は人工衛星や農機のデータも使い精度を高めた上で継続する。コメの出来を「やや良」などの表現で示す「作柄」は、前年との比較で示すよう改める。

 1956年から約70年間続く指数を廃止する衝撃は大きい。

 これまで作況指数は、単位面積当たりの収量を過去30年の傾向と比較して算出してきた。

 価格高騰が続く中でも、農水省は2024年産の指数は101の「平年並み」で、生産量は足りていると説明してきた。だが生産現場などからは、実際の収穫量は少ないとの見方が多く出ていた。

 現場実感との差は、品切れが相次いだ24年夏の「令和の米騒動」の前から指摘されていた。

 現場の違和感を放置し、実態に向き合わずにきたことがコメ高騰を招いた一因にあるのではないか。国が主食の収穫量を正しく把握できていなかったとすれば、深刻な問題である。

 作況指数はあくまで水田10アール当たりのコメの出来具合を示すものだ。例えば同じ指数100でも、前年より全国の作付面積が減るなどの要因があれば全体の収穫量も連動して減ることになる。

 調査に当たる人員やサンプル数の少なさが精度低下を招いているとの専門家の分析も聞かれる。

 実態とずれる要因は、これだけではない。

 農水省は主食に回る玄米を1・7ミリのふるいにかけて未熟な粒を除き、収量を把握してきたが、生産者はより目が粗い1・8~1・9ミリを使うため、農水省の方法では主食に回る量を多く見積もることになる。

 これでは正確な量を把握できない。生産者の声を十分に聞きながら、調査や公表を見直すべきだ。

 近年、猛暑などの気候変動が生産に大きな影を落とし、「玄米の中身がすかすかで、精米すると量が少なくなってしまう」との訴えが卸売業者などから上がっている。統計調査も温暖化に対応して改めなければならない。

 小泉氏は17日、コメの販売や出荷を担う約7万の事業者を対象に在庫などの報告を求める方針を示した。流通まで含め、安定供給への方策を探ってもらいたい。

 実態とのさまざまなずれから、農水省の硬直化という懸念が浮かび上がる。農政も時代に合わせた視点が不可欠だ。