少数与党が野党と個別に手を組み、法を成立させる場面が目立った。修正を経たとはいえ、内容について審議が深まったとは言えず、熟議の国会には程遠い。
国民の関心が高い重要法案が、またも置き去りにされたことへの落胆も大きい。
通常国会は22日に閉幕する。衆院で与党が過半数割れする中だが、2025年度予算や年金制度改革法、能動的サイバー防御の導入に向けた関連法などが成立した。日本学術会議を特殊法人に移行させる新法もできた。
目を引いたのは、与党と一部野党の賛成だけで法を成立させるケースだ。与党は、学術会議法は日本維新の会と、年金改革法は立憲民主党と、それぞれ個別に合意し、成立に持ち込んだ。
年金改革法は自民党内で意見集約できず、法案提出が当初予定よりずれ込み難航したが、立民の協力で遅れを取り戻し、1カ月足らずのスピード審議で成立した。
ただ、焦点だった基礎年金(国民年金)の底上げを実際に実施するかどうかの判断は先送りされた。立民以外の野党が「拙速だ」と指摘するのは理解できる。
維新が賛成した学術会議法には研究者から「学問の自由への決定的侵害だ」と批判がやまない。
与党が成立ありきで個別に合意を取り付けた結果、審議が尽くされたと言えるかは疑問がある。
見過ごせないのは、28年ぶりに審議入りした選択的夫婦別姓法案と、3月までに結論を出す方針を申し合わせていた企業・団体献金改革などの関連法案が持ち越され、継続審議となったことだ。
いずれも自民の反対が根強いことが要因にある。
選択的夫婦別姓は導入に前向きな石破茂氏が首相に就き、長年の論争の決着が期待されただけに、当事者はがっかりしたはずだ。
企業・団体献金の規制は合意への道筋が見えず、自民党派閥裏金事件を契機とした改革の機運は乏しいと言わざるを得ない。
政府が「国難」と位置付ける日米関税交渉や、コメの価格高騰への対応が待ったなしだったとはいえ、昨年秋の臨時国会に続き、政治改革に結果を出せなかったことは、国民の期待に背いている。
野党の共闘は、難しさが浮き彫りになる国会だった。今国会中に共闘が実現したのは、ガソリン税の暫定税率廃止法案など数える程度にとどまった。
立民の野田佳彦代表は、国会最終盤になって内閣不信任決議案の提出を見送った。
緊迫する中東情勢や関税交渉を理由に政治空白をつくるべきではないと述べたが、野党の足並みがそろいにくく、可決が見通せなかったことも背景にある。
切磋琢磨(せっさたくま)はいいが、野党間で足を引っ張り合っていては、少数与党といえども対峙(たいじ)は困難だ。