二十四節気のそれぞれをさらに三つに分けた七十二候に「菖蒲華」がある。「あやめはなさく」と読み、アヤメが咲き始めるころとされている。6月下旬からの5日間ほどを指す
▼新発田市の五十公野公園にあるあやめ園を歩いた。恒例のあやめまつりが開催中で、約60万本、300品種ものアヤメやハナショウブがけんを競う。夜はライトアップされ、幻想的な光景が浮かび上がる。曇天がかえって「主役」を引き立てていた
▼日当たりの良い場所を好むが、小ぬか雨が花弁をぬらすさまもまた、趣深い。「あまり日照りが続くと生育に影響する。ほどほどの雨ならありがたいですね」。あやめ園を管理している池田幸範さん(50)はお湿りを歓迎する
▼アヤメの街をうたう自治体は全国にある。その首長らが一堂に会し、アヤメを通して交流を深める「あやめサミット」が新発田市で開かれた。1988年に始まり、新発田市での開催は2014年以来3回目となる。10の市と町が参加した
▼サミットでは興味深い報告が相次いだ。茨城県潮来市と千葉県佐倉、香取両市、ホテルの4者がタッグを組んで、ホテルで各地の食材を使った特別メニューを提供する企画が好評だという。観光振興のヒントになりそうだ
▼県内では、新発田以外にもアヤメの名所がある。群落を俯瞰(ふかん)するのも良し、一株一株をじっくり眺めるのも悪くない。〈一人立ち一人かゞめるあやめかな〉野村泊月。清楚(せいそ)な立ち姿をためつすがめつしながら、盛夏の到来を待つ。