流行がなかなか収まらない。手洗いなどの基本を徹底し、重症化しやすい乳児に感染させないよう気をつけたい。
国立健康危機管理研究機構は、全国の医療機関から9~15日に報告された百日ぜきの患者数(速報値)は2970人で、1月からの累計が3万1966人になったと明らかにした。
現在の集計法となった2018年以降で既に最多となっている。これまで最も多かった19年は1年間で1万6845人だった。
都道府県別では、本県は累計数でみても、人口10万人当たりでみても2番目に多い。
全国的にも県内での患者数が多いことに留意したい。
百日ぜきは、激しいせきの発作が長期間続く感染症だ。次第にせきが激しくなり、回復まで2~3カ月かかる。
特に生後6カ月未満の乳児は重症化しやすい。せきの目立たない無呼吸発作やけいれんのほか、肺炎や脳症を起こし、最悪の場合は死に至る恐れもある。
予防には5種混合ワクチンが有効だ。定期接種は生後2カ月からで、計4回接種する。
注意したいのは、大人はあまり重症化しないことだ。せきが続いても、風邪などと判断されやすいという。一方、感染力が強く、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)や、感染者との接触で広がる。気づかぬうちに感染を広げる恐れもある。
百日ぜきは数年おきに流行するが、今年はかつてなく患者数が増えている。
増加の原因は明確ではないが、20年以降の新型コロナウイルス対策で病原体にさらされる機会が減り、免疫が弱まったことが一因と考えられる。百日ぜき以外の感染症も増加が顕著になっている。
今年の流行の特徴は子どもの患者が多いことだ。機構によると、5月下旬までの累積報告数の59%を10代が占める。20代以上の割合は例年より低いという。
乳児期に接種したワクチンの効果が弱まることが要因の一つとみられる。症状が軽く熱も出ないため、学校や塾へ行き、感染を広げてしまうこともある。
そうした兄や姉を通じて、家庭内で、新生児や乳児にうつすことが考えられる。
せきが続くなど体調が優れない場合には、百日ぜきの可能性も疑い、早めに医療機関を受診することが大切だ。
懸念されるのは、薬の効かない耐性菌の存在だ。国内でも乳児の死亡が報告されている。
大人は、子どもたちを守るために何ができるかを考え、行動する必要がある。
こまめに手洗いやうがいを行い、せきが出るなど体調の異変を感じたらマスクを着けるといった、ウイルス禍でも取り組んできた感染対策を改めて徹底したい。