膨大な情報へ手軽にアクセスできる一方、流言飛語も入り交じる。正しい選択をするため、情報を分析し、判断する力を磨きたい。

 7月20日に投開票される参院選の公示が3日後に迫る。最近の選挙で存在感を高めている交流サイト(SNS)では既に、政党や候補者側に加え、有権者側も活発に発信を行っている。

 参院選の前哨戦とも位置付けられた22日投開票の東京都議選で、共同通信が実施した出口調査では、投票の際に選挙に関するSNSや動画サイトの情報を「重視した」と答えた人は41・4%に上った。特に10代、20代で多かった。

 若者の投票率は低迷している。SNSが選挙や政治に目を向ける契機となることが期待される。

 ただ、SNSの利用には懸念もある。誤情報や中傷の拡散といった負の側面が目立つことだ。

 昨年の兵庫県知事選と名古屋市長選では、SNS上で政策に関して偽の情報や誤った情報を流された候補者が落選した。

 他の選挙でも、閲覧回数を増やして収益化するため、過激な内容や真偽不明の情報を投稿する例が見られた。

 誤った情報に基づいて有権者が投票先を決めるのでは、民主主義の根幹である選挙が揺らぐ。こうした発信は許されない。

 問題に対処するために改正された公選法は、付則で「必要な措置」を講じるとしており、与野党の協議会が対策を検討してきた。

 しかし、意見集約が難航し、法整備を見送った。対策は、偽情報の拡散への改善努力をSNS事業者に要請することなどを盛った声明を発表するにとどまった。

 憲法が保障する表現の自由との両立は難題だが、SNSの影響力の大きさを考えれば具体策の議論を急がねばなるまい。

 事業者の責任も重い。協議会が事業者から聴取した際には、「選挙に関する情報の真偽を認定するのは難しい」といった意見も上がったという。

 これに対し専門家は、新聞社やテレビ局には「表現の自由を乱用して選挙の公正を害してはならない」との歯止め規定が公選法にあるとして、事業者にも同様の責務を果たすよう求める。事業者は前向きに取り組むべきだ。

 有権者は情報を読み解く力が必要になる。SNSでは、自分と同じ考えばかりに接する「エコーチェンバー」や、違う意見が届かない「フィルターバブル」が起きやすく、情報を客観的に捉えづらくなるリスクが指摘されている。

 さまざまなメディアの情報や各党の公約と、SNSの情報を比較することで真偽や偏りが把握しやすくなる。知る努力を重ね、一票を託す先を選びたい。