与党の自民、公明両党は参院でも過半数を割り込んだ。民意という後ろ盾を失った政権が、内憂外患の難局を乗り切れるのか。甚だ疑問である。

 石破茂首相(自民総裁)は参院選の結果を受け21日、会見を開き、「政治を停滞させない」として続投を正式表明した。

 選挙前は、参院全体で過半数を維持できる改選50議席を「必達目標」としていた。だが自公は計66あった改選議席を47に減らした。自民だけでも改選52から39に激減した。大敗である。

 にもかかわらず、首相は自民が比較第1党の議席数であることを続投の根拠に挙げた。

 詭弁(きべん)ともいえる強引な正当化である。この説明にうなずく国民はどれほどいるか。民意に反した「居座り」との批判は免れない。

 今回の参院選は、与党が衆院に続き参院でも少数となるかが焦点で、事実上の政権選択選挙と位置付けられた。

 結果は、与党への不満が噴き出した。国民が政治の大転換を求めたといえる。

 しかし首相は自身の続投に加え、党役員人事や内閣改造も9月末の役員任期を念頭に考えるとし、刷新を見送った。連立の枠組み拡大も否定した。

 誰も大敗の責任を取らないまま、政権の姿は何一つ変わらず、これでは先は見通せない。

 そもそも連立拡大には立憲民主党や日本維新の会、国民民主党も否定的で、こうした野党の対決姿勢を受け、首相は「ここから先は、いばらの道」とも述べた。

 政策ごとに一部野党との連携を模索することになれば、先の通常国会のように一致点を見いだせぬまま課題の先送りが相次ぐ懸念が拭えない。

 針路が定まらず、政治が漂流することは避けねばならない。

 打開すべき問題は山積している。米国のトランプ大統領が打ち出した高関税措置を巡る日米交渉は、相互関税の上乗せ分の発動が8月1日に迫る。

 参院選期間中、日本への相互関税25%が通告された。4月時点より1%高くなっていた。裾野が広い自動車産業に対しては既に追加関税が発動されており、どれほど悪影響が広がるのか気がかりだ。

 混乱する足元を見られ、守勢に回ることがあってはならない。

 国内は物価高に疲弊している。参院選当日の出口調査で物価高対策として「消費税減税」と「現金給付」のどちらが良いか尋ねたところ、減税を求めた人が72%と圧倒的に多かった。

 困窮から抜け出す出口を示すのが政治の役割だ。与野党ともに党利党略を離れ、国民生活と向き合ってもらいたい。

 党派を超え、石破氏がそのかじ取りを担えるか。心もとないと言わざるを得ない。