責任政党が結束できず、山積する政策課題が置き去りにされては、国民の信をさらに失うことは明らかだ。混乱が長期化していることに強い懸念を抱く。

 自民党は、参院選大敗を受け、党大会に次ぐ重要な意思決定機関である両院議員総会を開き、総裁選の前倒し実施の是非を判断する党内手続きを、総裁選挙管理委員会に一任することを決めた。

 党総裁の石破茂首相は総会で「日米関税合意を実行に移す責任がある」と述べ、続投に重ねて意欲を示したものの、「けじめをつけるべきだ」など、総裁選の前倒し実施を求める意見が続出した。

 党則には「所属国会議員と都道府県連代表の過半数の要求があった時は、総裁選を行う」との規定がある。この規定に基づいて総裁選を前倒しするか判断される。

 総裁選の前倒しが決定すれば、70年に及ぶ党の歴史で初めてのことだ。石破首相の総裁1期目の任期は2027年9月までだが、総裁選が前倒しになれば、政権維持は厳しい状況に追い込まれる。

 衆参両院で少数与党に陥った自民の混迷が、一段と深まったといえるだろう。

 ただ、党は参院選総括の報告書を8月末にまとめる予定で、逢沢一郎総裁選管理委員長は「総括が済まないうちに事務手続きを進めるわけにはいかない」とし、慎重に扱う考えを強調している。

 所属議員らへの意思確認は、早くても8月末からとみられ、参院選から3週間たっても続いている党内の膠着(こうちゃく)状態が、当面解消しないことは決定的だ。

 気がかりなのは、首相と党内の意思疎通が図れないことで、参院選で注目された物価高対策をはじめとする政策課題がどう進展するのか、見通せないことだ。

 首相は、4日の衆院予算委員会で立憲民主党の要求に応え、企業・団体献金の規制強化に関する党首同士の協議入りに賛同した。これを受けて献金の受け皿となる政党支部の整理を党に指示した。

 規制強化は組織力が弱るとして慎重な自民の「身内の理屈」より、国民の理解を得る必要があるとの判断だ。企業献金の在り方が決着すれば、派閥裏金問題に区切りが付く期待があるのだろう。

 しかし党内からは、説明もない首相の方針転換に「信じられない暴挙だ」と憤る声が上がる。

 首相が、消費税減税を含む物価高対策でも与野党協議を確約したことや、コメ増産への政策転換を発表したことにも、事前調整がないとして党内の反発が強い。

 首相が成果を急ごうとすればするほど、党内との亀裂が深まっている印象が否めない。

 党内政局が収まらず、結果として国政を遅滞させるのでは、国民生活への影響が大きい。自民は、自負する「国民政党」たり得ているのか、自戒が求められる。