株式市場は高値で沸く一方で、庶民の暮らしは依然、物価高に苦しめられ、ゆとりが感じられない。政府と日銀は、国民の生活実感に見合った実効性ある対策を早急に講じることが求められる。
東京株式市場は今週、日経平均株価(225種)が5万円を初めて突破した。31日の終値は5万2千円台を付け最高値を更新した。
年初から1万円以上の値上がりだ。特に高市早苗氏の自民党総裁就任以降はペースが加速し、10月1カ月間で過去最大の約7500円も上がった。背景には高市政権の財政拡張と金融緩和路線への期待感があるとみられる。
成長分野である人工知能(AI)関連の大型株が相場をけん引していることや、米国と中国の貿易摩擦が緩和したことも要因だ。
ただ、株高の恩恵は投資に積極的な富裕層に限られる。
日本証券業協会が昨年実施した調査では、株式などの有価証券の保有率は24・1%にとどまる。預貯金だけの家計が多く、経済格差は広がっていくとの見方もある。
10月の値上げ品目は3千超で、消費者の生活は厳しさが続く。
日本世論調査会がまとめた「暮らしと経済」に関する全国郵送世論調査によると、「値上げが生活に打撃になっている」との回答は「非常に」と「ある程度」を含めて93%にも上った。
生活苦を和らげる物価高対策が急がれる。
高市首相は景気の下支えを優先する考えから、積極財政で物価高対策や減税を推進する構えだ。
物価高対策では、ガソリン税に上乗せされる暫定税率の廃止を12月31日に実施する方向だが、代替財源についての結論を先送りしたことは懸念される。
各種の政策には当然、財源が必要となる。高市首相は赤字国債の増発に言及している。
国と地方の長期債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率は、2025年度末で先進国最悪の211%に達する見込みだ。
安易に国債を増発し、これ以上財政を悪化させることは避けるべきだろう。
日銀は30日の金融政策決定会合で、政策金利を現行の0・5%程度で維持し、利上げの先送りを決めた。トランプ米政権の高関税政策が世界経済に及ぼす不確実性が依然として高く、影響を見極める必要があるとの判断からだ。
利上げ先送りを受け、外国為替市場では円安ドル高が進んだ。円安が続けば輸入品価格が高まり、国内の物価高が加速しかねない。
会合では、2人の委員が物価の上振れリスクなどを理由に利上げを提案した。「今回引き上げてもおかしくなかった」と指摘する識者もいる。
難しい局面が続く中、日銀は国民生活に寄り添い、物価安定の使命を果たしてほしい。













