経済大国同士の対立は、世界全体の懸念材料だ。両国は、置かれた立場を自覚し、共存共栄できる道筋を探るべきである。
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が30日、韓国で会談した。第2次トランプ政権では初の対面会談だ。両国は制裁やその報復として打ち出した措置の一部を1年停止することで合意した。
トランプ氏は米国が対中追加関税を10%引き下げると表明した。
米国が引き下げるのは、合成麻薬フェンタニルの流入を理由に課していた20%の追加関税だ。麻薬の取り締まり強化に中国側が応じたという。
中国はハイテク製品に幅広く利用されるレアアース(希土類)の輸出規制導入を1年間停止し、輸出を継続する。中国が今月、輸出規制強化を発表すると、トランプ氏は対中追加関税を表明し、緊張が高まっていた。
中国が米国産大豆を購入することでも合意した。中国が輸入を停止し、米国の農家は大きな打撃を受けている。農家に支持層が多いトランプ氏にとって譲れない問題となっていた。
第2次トランプ政権下で米中両政府は関税を引き上げ、一時は100%を超える追加関税をかけ合った。両国経済への影響は大きく、関係改善を図ってきた。
今回の会談では摩擦の激化をかろうじて回避した形で、会談には一定の意義があったと言えよう。
トランプ氏は来年4月に訪中する意向を示した。両首脳が相互訪問して会談を重ね、信頼関係を深めてほしい。
気がかりなのは、安全保障に関する問題である。
今回の会談では、台湾問題については協議しなかったとされる。中国が「核心的利益」と位置付ける台湾に関するやりとりが伝えられないのは異例だ。
中国は、ウクライナ侵攻を続けるロシアから原油を購入している。トランプ氏はそれを問題視してきたが、議論しなかったという。
両国は、意見が対立する問題を避け、貿易協議の合意を優先したのではないか。
安全保障が今後、火種となる恐れは十分にある。米中両国の冷静な対応が求められる。
トランプ氏は習氏と会談する直前、国防総省に核兵器の実験を指示したと発表した。
他国の核計画を踏まえ「対等な立場」になる必要があると主張した。核爆発を伴う実験を再開すれば、1992年以来となる。
トランプ氏は、中国が核兵器保有数で米ロに大きく離され3位だが、急速に増強しており、「5年以内に追いつく」と指摘した。中国をけん制する狙いもあったとみられている。
実験は核軍縮に逆行し、軍拡競争を招く恐れがある。絶対にあってはならない。
 
    












