昨夏「佐渡島(さど)の金山」が世界遺産に登録された佐渡市。観光客は徐々に増えているが、目玉の史跡がある相川地区が中心で全島への波及はまだ薄い。島の玄関口、両津地区は新規の出店はあるものの廃業も多く、シャッター街に大きな変化はない

▼ある商店主は「手をこまねいていればゴーストタウン化し、治安も悪化する。人口や高齢化の数字を見れば、そう先の話じゃない」と危機感を強くする

▼人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長は著作「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」でデータに基づいた予測をカレンダー形式で示している。2030年「百貨店や銀行、老人ホームが地方から消える」、50年「世界的食料争奪戦に巻き込まれる」など衝撃的な出来事が並ぶ

▼出版を決断させたのは、若い世代の人口減少問題への強い関心だったという。少しでも早く真実の情報に接し、待ち受ける社会にどう向き合うか考えてくれたらとの思いがあった

▼温暖化や格差拡大、インフラ老朽化が世界規模で進んでいる。「自国ファースト」の蔓延(まんえん)による混乱も収拾がつかない。子どもたちはこうした厳しい未来を生きていく。社会を手渡す大人が指をくわえているわけにはいかない

▼前述の商店主は「あの時手を打っておけば、と後悔したくない。現実に目を向け小さな対策でも積み重ねたい」と集客のために知恵を絞る。プロ棋士のように数十手先までは読めなくても、見通せる将来がすぐ目の前にある。諦めてはならない。

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