今年初めに福島県郡山市で起きた交通事故が、ずっと頭の片隅にある。大阪から大学の受験に訪れていた19歳の女性が、車にはねられて亡くなった。信号無視の車は酒気帯び運転だった
▼女性は浪人をして予備校に通い、自宅を遠く離れた地で将来を切り開こうとしていた。短い一生に思いをはせる。「大阪から受験に来てくれたのに、福島県民として申し訳ない」。涙を流して語った市民の声が、地元紙に載っていた
▼福島県民として申し訳ない-。少し前から似た思いを拭えずにいる。「福島県民」を「日本国民」に置き換え、おわびしたくなる。「日本人ファースト」と臆面なく言い切る感覚についていけない
▼参院選では「違法外国人ゼロ」の公約も掲げられたが、違法に外国人も日本人もない。文化や言葉の違いで問題も生じるが、ネガティブに語る言葉が極論に過ぎる。お互いさまの精神は日本人コミュニティーと同じこと。行き着く先を憂う
▼ガーナとの国際交流を進める「ホームタウン」に認定された三条市に、批判が殺到しているという。大量の移民を招くという曲解によるものだが、あるべき「たが」が外れてしまったかのようだ
▼日本で暮らす外国人は360万人を超える。共生で社会が成立している。インバウンドによる景気浮揚を当て込み、国は観光立国もうたう。おいしいとこ取りだけして、心の底で相手を信じない。上から目線で排除もためらわない。そんなふうにさげすむ目がこの国に向けられてはいないか。