花だけを見て、これは何かと聞かれても、正答するのは難しそうだ。休日にぶらり、新潟市中央区の複合施設「いくとぴあ食花」へ出かけた。食育・花育センターの一角に飾られた写真が目を引いた

▼県内で育つ野菜の花々の写真だった。新潟市の写真家鈴木孝枝さんと写真教室の生徒たちが、各地の畑を訪ねるなどして2年がかりで写したという。38点が9月6日まで展示されている

▼黄色い花でも、多種多様だ。カボチャはころんとした丸い花びらが愛らしく、ズッキーニは細長い花びらがすっきりときれいな星形を描く。一方でキュウリにスイカ、ゴーヤーなどは形が似ていて、一緒に実が写り込んでいなければ、見分けが付かない

▼ニンジンやセリは、丸く集まった白い小花が、夜空に開いた花火のように見えてくる。インゲンにエンドウマメは、アップで写すと洋ランのように華やかだ。ゴボウやホウレンソウの花はどんな?、と聞かれて、思い描ける人はどれだけいるだろう

▼帰り道、隣接する農産物直売所で、生産地と生産者名が記された野菜を手に取った。どんな花を咲かせるのだろう、どんな人が育てたのだろうと、いつも以上に想像が膨らむ

▼県内には農産物直売所が500カ所ほどあり、昨年の販売額は215億円超と、過去最高を更新した。出荷者数も延べ2万5千人を超え、過去最多だ。今夏は猛暑と少雨に多くの生産者が手を焼いたに違いない。その分、野菜には多くの愛情が注がれたはず。かみしめて食したい。

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