要望をのんであげるのは今のうち。そんなふうに感じてしまうのは、うがち過ぎだろうか。原発再稼働の地元同意が議論されるさなか、こうした一つ一つが積み重なった先に何があるのか、考えないではいられない
▼政府は原発立地地域への財政支援について、対象エリアを拡大する方針を決めた。柏崎刈羽原発に当てはめれば、これまでの5市町村に周辺の4市が加わる見通しだ。かねて花角英世知事らが要望していたことである
▼柏崎刈羽で原発事故が起きた際に避難路となる幹線道路は、全額国費で整備することを既に知事らは政府に確約させている。再稼働を巡っては自民党県連も今週、経産相に要望した。財政支援だけでなく電源三法交付金の対象地域も広げ、さらに企業誘致などで地元に恩恵が生じるよう求めた
▼この際だから、との思惑も透けるが、リスクや負担に見合った対応は当然図られるべきだ。ただ、立地地域と再稼働を急ぐ国側のかくのごときやりとりは、原発を動かすためのプロセスを着実に進める儀式のようにも見える
▼本県側としては、地元同意の議論を深めるため、丹念に前提を確認しているのかもしれない。一方で、要望がかなえられていった末に、再稼働を拒否するシナリオが知事や県議会に果たしてあるだろうか
▼できる限りの要望は聞くけど、あとは分かってるよね。そんな声が聞こえるような…。実態として外堀が埋められ、県民が声を上げる余地がなくなってしまうことが、なければいいのだが。
