
「難しい題材をいくつも含んでいて、悦子の捉え方は人によって違う。伝えなければならないことは何かを考えて演じました」と話す広瀬すずさん
映画「遠い山なみの光」はノーベル賞作家カズオ・イシグロさんの長編デビュー作が原作で、主人公の悦子が戦後復興期の長崎を振り返る形で物語が進む。自由を求める女性、戦前教育の否定といった社会の変容とともに描かれるのは、消えることのない戦争や原爆の傷痕だ。主演の広瀬すずさんは、原爆による心の傷を吐露するシーンへの思い入れを「痛みを思い出していくような感覚で、大切に、丁寧に演じました」と語る。
5月に開催されたカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門への出品作。広瀬さんは2015年に是枝裕和監督の「海街diary」がコンペティション部門に選出された際も、出演者として世界の映画人が憧れるレッドカーペットを歩い...
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