上越市民の節水生活は51日に及んだ。降雨によるダムの水位回復などを受け、市は先週、節水要請を解除した。県営高田発電所の管破断事故が原因の一つだが、何といっても尋常ではない渇水が響いた
▼今夏、県内は記録的な高温少雨となり、特に上越市(高田)では7月の降水量が0・5ミリにとどまった。高田の7月の平均降水量は206・8ミリなので、いかに異常だったのかが分かる
▼断水の恐れがあることから、上越市は高田や直江津などの住民約10万8千人に40%以上の節水を呼びかけた。市民は連日給水スポットに列を作り、節水に協力した。筆者も新潟市へ帰省する際に洗濯物をまとめて持ち帰った
▼一時期、需要が高まったミネラルウオーターや食器洗いに困らない紙皿が、上越市内のスーパーから一斉に消えた。隣の妙高市まで水を買いに行った主婦は「水の大切さが初めて分かった」と漏らした
▼身近にあって当たり前のものは、そのありがたさを忘れがちになる。水もそう。この夏のような渇水や災害を体験しなければ無限にあるように思えてしまう。平穏な日々も同じだろう。体をこわせば健康のありがたみを実感する。新型コロナウイルス禍では他者との関係が絶たれ、人とのつながりの大切さを再認識した
▼節水はもうこりごりだ。しかし、今回の体験が暮らしの足元に目を向けるきっかけになったとしたら、意味があったと思える。喉元過ぎて熱さを…では、何にもならない。何げない日常に感謝して過ごしたい。