流し台で洗い物をする高橋香織(仮名)。ガラス戸の向こうでは高齢の女性受刑者が作業室で指導を受けていた=2025年7月、福島市の福島刑務支所(画像の一部を加工しています、撮影・今里彰利)
 流し台で洗い物をする高橋香織(仮名)。ガラス戸の向こうでは高齢の女性受刑者が作業室で指導を受けていた=2025年7月、福島市の福島刑務支所(画像の一部を加工しています、撮影・今里彰利)
 手を握り、心情を語る高橋香織(仮名)。出所までの日を数えながら、社会復帰しようと前向きに考えている=2025年7月、福島市の福島刑務支所(撮影・今里彰利)
 女性のみが入る福島刑務支所の収容棟。部屋にエアコンはなく、窓が開けられていた。廊下には大型の扇風機が設置されている=2025年7月、福島市(撮影・今里彰利)
 刑務官が立ち会う中、取材を受ける高橋香織(仮名)=2025年7月、福島市の福島刑務支所(撮影・今里彰利)
 高橋香織(仮名)の年表
 タイトルカット

 スーパーの食料品売り場で、視界の中に店員の姿はなかった。「もしかしたら、誰も見ていないかもしれない」。ふと、そんな考えが頭をよぎり、心を支配していく。見つかれば、家族との平穏な時間をまた失う。そう分かってはいるのに、気持ちにあらがえず、手が伸びていく。商品をかばんに入れ、そのまま店を出たところで、店員に呼び止められた。

 50代の高橋香織(たかはし・かおり)(仮名)は、福島市にある福島刑務支所に服役中の受刑者だ。万引を重ねて初めて刑務所に入り、出所から1年ほどが過ぎたあの日。自由な日々を取り戻していたのに、衝動を抑えられなかった。

 出所と入所を繰り返し、今回で6回目の塀の中での暮らしとなる。罪...

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