穂村弘さん
 穂村弘さん
 「若い時は、未来がいっぱいあるのに何かやるのが怖かった。高い新車を買うと傷つけるのが怖くて乗れないみたいな」と話す穂村弘さん
 穂村弘さんの著書「満月が欠けている」
 第23回若山牧水賞の授賞式であいさつする穂村弘さん=2019年
 穂村弘さん

 現代短歌の一線に立ち、20代のころから鋭敏な感覚で活躍する歌人の穂村弘さんは、42歳の時に緑内障と診断された。治療を続けて20年が過ぎ「幸運にもそこまで怖いことにはなっていません」と新刊書につづった。病が分かり、失明の怖さが頭をよぎったころのことを「恐怖のランキングが入れ替わった」と振り返る。

 60代になり、幼い頃からの半生を語るのはどんな感じなのだろう。「だんだん過去が長くなって、未来が短くなるよね。そうすると、記憶の一番端っこがどんどん遠くなっていくよね。薄れて抜けていく部分も多いんだけど、残るものは妙に鮮明になる」。ゆるゆると、でも的を外さない穂村さんの語りに引き込まれ、続きをどんどん...

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