
穂村弘さん
現代短歌の一線に立ち、20代のころから鋭敏な感覚で活躍する歌人の穂村弘さんは、42歳の時に緑内障と診断された。治療を続けて20年が過ぎ「幸運にもそこまで怖いことにはなっていません」と新刊書につづった。病が分かり、失明の怖さが頭をよぎったころのことを「恐怖のランキングが入れ替わった」と振り返る。
60代になり、幼い頃からの半生を語るのはどんな感じなのだろう。「だんだん過去が長くなって、未来が短くなるよね。そうすると、記憶の一番端っこがどんどん遠くなっていくよね。薄れて抜けていく部分も多いんだけど、残るものは妙に鮮明になる」。ゆるゆると、でも的を外さない穂村さんの語りに引き込まれ、続きをどんどん...
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