大一番で実力を最大限に発揮するのは容易でない。体のコンディションはもちろん、何より気持ちのコントロールが鍵を握る…などと、にわか評論家になってしまった。3連休最終日の夜、テレビ画面の向こうで泰然と偉業を成し遂げた「鳥人」に見ほれてのこと
▼世界陸上東京大会の男子棒高跳びで、スウェーデンのデュプランティス選手が世界新記録を出した。異次元の強さだった。金字塔となる6メートル30センチは2階建て住宅の屋根ほどの高さになる
▼棒高跳びといえば、ウクライナのブブカ選手が頭に浮かぶ。1985年に世界初の6メートル越えを果たし、以来29年にわたり絶対王者に君臨した。2020年から世界記録を上書きし続けるデュプランティス選手の台頭で新時代に入った
▼今回の世界陸上で男子100メートルは5位までが9秒台だった。もはや驚きはない。人類が10秒の壁を越えたのは1968年だが、80年代から記録更新が相次ぐ。日本人も2017年以降4人が10秒を切った
▼日本球界で夢の領域だった球速160キロは、既に10人以上が到達した。男子フィギュアスケートでは4回転ジャンプがほぼ必須の技になった。アスリートの進化に目を見張る。そして胸が躍る
▼政権政党の新総裁選びが始まる。新聞の投稿欄に「政界に大谷翔平はいないのか」と嘆く声があった。気持ちは分かる。この国の政治システムも政治家の資質も、加えて私たち有権者の意識も、果たして進化しているのか。スポーツとは比べるべくもないのだが。