一年中、手頃な価格で手に入るバナナ。イメージとしては、産地は熱帯で主に輸入品だ。そんなバナナの栽培に、雪国新潟で挑戦している人がいる
▼燕市でハス苗の生産販売をする加藤正人さん(63)は、5年前から「手も金もかけない」バナナ栽培を模索している。2022年に取り組みを知り、取材した。自宅前のジャングルのようなビニールハウスが目を引いた。加藤さんの話も面白かった。以来、毎年お邪魔している
▼沖縄の知人に栽培を勧められた加藤さんは「新潟でバナナなんてって思ったけど、やってみないと分からないと言われ、考え直した」と振り返る。挑戦してみると害虫も付かず、丈夫で手もかからない
▼「経費や手間をかけず新潟の冬を耐えるバナナがあれば、育苗ハウスを活用するなどして農家の副収入になる」と可能性と意義が見えた。暖房を使わない“耐寒バナナ”を育てようと、茎に断熱材を巻くなど試行錯誤を重ねる
▼この夏も加藤さんを訪ねた。越冬できなかった株が多く、ハウス内のバナナの数はやや減っていた。「たくさん枯れて残念ですね」と話を振ると「万が一生き延びた株に万が一の価値がある。簡単にはいかない。壁は高い方がいいでしょ」と涼しい顔だ
▼近年はバナナ栽培をしてみたいというニーズが増えてきた。昨年品切れだったバナナ苗も今月から販売を再開し、「バナナ産地・新潟」構想は着実に進んでいる模様だ。そんなバナナ?!が実現したら…と考えると、わくわくがとまらない。