大学入試は一発勝負の筆記試験だった。前日は気持ちが焦り、目がさえて寝付けなかった。寝不足で迎えた当日は「みんな同じ条件なんだから」と、気持ちを奮い立たせた
▼30年ほど前の実体験だ。決められた時間と場所で、受験者が一斉に挑む試験は、何より平等。そんな考えが揺らいだのは今年の春、3月8日の国際女性デーに当たり、上智大の三浦まり教授の話を聞いてからだ
▼先進国では四年制大学の進学率は女性の方が男性よりも高いのが一般的だ。だが、日本は女性の方が低い。女性が抱える障壁の一つとして、三浦教授は生理を挙げた。日本では海外に比べ一発勝負の試験が重視されてきた。女性が当日を万全の体調で迎え、結果を出すのが難しい側面もあるのではないか、と
▼生理に伴う心身の不調は人によって異なる。二日酔いの頭痛のような状態が続く人もいれば、激しい腰痛が出る人もいる。いずれにせよ、不調は仕方ないと受け入れがちだが、性別による不平等に当たるという観点が欠けてはいなかったか
▼もちろん、体調不良は男女を問わず起こり得る。近年は「総合型選抜」といった、高校での活動実績などを重視した試験が広がっている。幅広い選択肢が示され、悔いなく実力が発揮できる環境が整うといい
▼来年1月17、18日に行われる大学入学共通テストの出願受け付けが始まった。時間は誰にとっても等しく過ぎる。実りある秋を越えて、本番に挑めますように。見守る周囲も、これからが正念場となる。