地下鉄駅の新設工事が進むアテネ中心部エクサルヒアの旧広場。グラフィティだらけの仮設フェンスに「もう観光をさせるな」と書かれた横断幕が掲げられていた=2025年6月(撮影・沢田博之、共同)
 地下鉄駅の新設工事が進むアテネ中心部エクサルヒアの旧広場。グラフィティだらけの仮設フェンスに「もう観光をさせるな」と書かれた横断幕が掲げられていた=2025年6月(撮影・沢田博之、共同)
 繁華街から自宅がある丘の上へと延びる坂道に立つイズミニ。「この街らしい風景が少しずつ消えている」と眉をひそめた=2025年6月、アテネ(撮影・沢田博之、共同)
 ロウビコナスのギオルゴス。公共の広場をなくし地下鉄駅を建設する政府に「街の緑をなくし、コンクリートジャングルに変えている」と憤る=2025年6月、アテネ(撮影・沢田博之、共同)
ギリシャ・アテネ

 白いしっくいの壁を、ペンキやスプレーで描かれたグラフィティ(落書き)が埋め尽くす。街並みが異彩を放つアテネ中心部エクサルヒア。両脇に小さな個人商店やオフィス、住宅が立ち並ぶ坂道を上ると、青々と茂る葉が戸口を覆う古びたマンションが目に入った。

 イズミニ・マシウダキ(34)は、その一室に住んで8年になる。「憧れた通りの活気ある暮らしだった」。文化人や芸術家が多く暮らし、アナキストらのデモや集会も頻繁にある。刺激的な街への愛着や、近隣住民との親交が日増しに深まっていった。

 「でも…」と肩を落とし、ため息交じりに続けた。「この2年で家賃が倍になった。もう払えない。出て行くしかない」

 隣人は次々に部屋...

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