
胃ろうで用いる栄養バッグやカテーテルについて説明する東邦大の鷲澤尚宏教授=東京都大田区
患者の腹部に小さな穴を開けて管を通し、流動食や水分を胃に直接送り込む「胃ろう」は、口からの食事が困難になった人に対する有用な栄養補給法だ。ところが2010年代、終末期の高齢者の胃ろうが「無駄な延命処置」などと批判され、「胃ろうバッシング」が噴出。十数年たった今もその影響は残り、本来恩恵にあずかるべき患者まで胃ろうを受けられていない懸念があるという。
▽嚥下機能低下
今年4月、横浜市の介護施設で暮らす女性(93)は市内の病院で大腸がんと診断された。開腹手術によるがん切除が決まり、医師は息子のAさん(62)にこう説明した。
「手術後に口からの食事ができるかどうかは不透明です。高齢者は短期間の絶食...
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