「政治とカネ」に厳しい目が向けられる中で、国会議員が秘書給与を詐取したとされる事件がまた起きた。悪質な行為が繰り返されることに憤りを覚える。

 東京地検特捜部は、国から公設秘書の給与をだまし取ったとして、詐欺罪で石井章元参院議員=日本維新の会除名=と事務所スタッフを在宅起訴した。

 公設秘書として名義を貸した男性は起訴猶予とした。

 起訴内容によると、3人は共謀し、男性を公設第2秘書に雇用したとする虚偽の採用届を参院に提出し、2021年5月~22年10月に給与などの名目で計約828万円を詐取したとしている。

 関係者によると、男性の給与は事務所費などに充てられたとされる。任意聴取に石井被告は事件への関与を語らなかったが、男性は名義貸しを認め、石井被告からの要請に応じたと供述したという。

 地検は今年8月、東京の議員事務所などを家宅捜索した。石井被告は維新から除名処分を受け、9月に議員辞職した。

 石井被告は家宅捜索を受け「国民の皆さまに心より深くおわび申し上げる」などとするコメントを発表しただけだ。議員を辞職しても説明責任はあるはずだ。記者会見を開くべきである。

 維新は参院選で国会議員の報酬や定数のカットなど「身を切る改革」を公約し、「政治とカネ」に厳しい姿勢をアピールしてきた。石井被告に説明責任を果たすよう党として強く働きかけるべきだ。

 秘書給与の詐取事件が一向に後を絶たないことは看過できない。

 2000年前後に同様の事件が相次ぎ、給与全額を秘書に直接交付することや、議員による寄付要求の禁止など規制が強化された。

 しかし昨年、自民党に所属していた広瀬めぐみ元参院議員が立件され、有罪が確定した。

 この事件では、公設第1秘書の妻に名義を貸すよう依頼し、公設第2秘書に採用したとする虚偽の届け出を参院に提出した。

 石井被告の事件では、事務所が公設秘書の給与口座を管理していたという。直接交付の規定は実効性がなかったとみられる。

 再発防止に急ぎ取り組まなければならない。

 議員事務所では、誰が公設秘書で、誰が私設秘書か、外部から確認するのが難しく、不正が露見しにくいとされる。

 誰を公設秘書に雇っているか広く公開することが詐欺抑止につながるとの指摘がある。一考に値するのではないか。

 国会議員は立法府に属する。法令順守意識が不可欠であることは言うまでもない。

 議員の政治活動が法に触れていないか監視しなければならないこと自体、嘆かわしい。これ以上、政治不信が募らないよう、襟を正してもらいたい。