
80年前の沖縄戦で激戦地となったガマの前に立つ具志堅隆松。当時の惨劇を思い浮かべながら遺骨収集活動を続ける=2025年7月、沖縄県糸満市(撮影・林昌三)
台風が近づいていた。うっそうと茂る南国の樹林が揺れる。沖縄県糸満市南部。太平洋を望む崖にある林の中は昼間でも暗い。戦没者の遺骨収集を続ける具志堅隆松(ぐしけん・たかまつ)(71)が7月下旬、四つんばいになり、地表の土や葉を取り除いていた。
「あ、歯がある。ボタンやガラス片もある」。ヘッドライトを照らして即座に判断する。「元日本兵の軍服のボタンと防毒マスクのガラスだ」。前日の雨で表土が流されたのか、骨片や軍装品が次々と出てきた。すぐ脇には男性の大腿(だいたい)骨。身元は分からないが「これでこの遺骨は兵士とほぼ確認できた」。
斜面を10メートルほど下ると、顔面が陥没した全身の遺骨が横たわっていた...
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