「最後のネアンデルタール人」が暮らした可能性があるジブラルタルの洞窟。クライブ(中央)ジェラルディン(右)スチュワートのフィンレイソン一家が発掘調査する=2025年8月(撮影・アンセルモ・トレス、共同)
 「最後のネアンデルタール人」が暮らした可能性があるジブラルタルの洞窟。クライブ(中央)ジェラルディン(右)スチュワートのフィンレイソン一家が発掘調査する=2025年8月(撮影・アンセルモ・トレス、共同)
 ジブラルタルの「ゴーラム洞窟群」の前には地中海が広がる。かつては海面が低くなだらかな丘が続いていた=2025年8月(撮影・アンセルモ・トレス、共同)
英国、ジブラルタル(英領)、イベリア半島

 地中海に面した巨大な岩山のふもとにいくつもの洞窟が並ぶ。入り口近くまで波打ち際が迫っている。「想像できないかもしれないけど、数万年前はもっと海面が低かった。なだらかな丘がずっと先の海岸まで続き、豊かな生態系が築かれていた」。生物学者で考古学者のジェラルディン・フィンレイソン(65)が説明する。

 イベリア半島の南端近くに突き出した英領ジブラルタル。絶滅した「もう一つの人類」ネアンデルタール人が最後の時を迎えた地の一つと考えられている。寒冷化するユーラシア大陸の各地で彼らは姿を消していったが、ここでは少し長く生きることができた。「陸と海の幸に恵まれた“最後の楽園”だったに違いない」。ジェラルディ...

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