これまでとは異なり、保守色の濃い政権が発足する大きな節目である。合意した政策を丁寧に説明し、国民の理解を得て実行に移せるかが試される。
自民党と日本維新の会は20日、連立政権樹立で正式に合意した。自民の高市早苗総裁と維新の吉村洋文代表が合意書に署名した。
署名後、高市氏は「今日を起点に日本経済を強くしたい」と語り、吉村氏は「日本をよくしたいという思いは一緒だ」と応じた。
衆院で自民会派と維新会派を合わせると過半数に近づき、21日召集の臨時国会では高市氏が初の女性首相に選出される見通しだ。維新は当面閣僚を出さない閣外協力にとどめる。
合意書は、憲法改正の準備加速や外国人規制の強化を明記した。スパイ防止関連法制定を掲げ、選択的夫婦別姓には否定的で、保守色が目立つ内容だ。
両党の政策協議では、維新が提示した12項目を自民がほぼ受け入れ、外交・安全保障やエネルギーなどの基本政策で一致した。しかし、期限が明示されているのは、国会議員定数削減と「副首都構想」などしかない。
吉村氏が「連立の絶対条件」とした国会議員の定数削減は、衆院議員の1割を目標に臨時国会で法案の成立を目指す。
維新は「身を切る改革」と訴えるが、地方や中小政党の意見を反映しにくくなる恐れがある。弊害を無視してはなるまい。
副首都については、法案を来年の通常国会で成立させるとした。吉村氏はこれまで「ツインエンジンで日本を引っ張っていく」と意義を強調してきた。
副首都は、維新の「大阪都構想」が前提だが、自民大阪府連は都構想に反対してきた。整合性を取れるかが問われよう。
一方、物価高対策など国民の関心が高いテーマでは、曖昧な表現が目立った。
維新は、食料品の消費税率を2年間0%にするよう要求していたが、自民党と協議体を設けて検討することになった。
焦点だった「政治とカネ」問題では、廃止を求めていた企業・団体献金は、高市氏の自民総裁の任期である2027年9月までの合意に向けて協議するというが、これでは先延ばしだ。維新の本気度を疑わざるを得ない。
首相指名選挙を間近に控え、合意が困難なテーマは結論を棚上げしたいとの「連立ありき」の姿勢が鮮明だ。
7月の参院選で衆参ともに少数与党に転落して以降、石破茂首相の辞意表明、高市総裁の選出、公明党の連立政権離脱表明と政治空白は3カ月にも及ぶ。
この間、国民は物価高で苦しい生活を強いられてきた。世論は厳しさを増していることを、自民・維新両党は自覚するべきだ。