
「最後の山」
周囲にここより高い場所はない―。そんな頂上を目指す、シンプルで明快な行為が登山だ。ビルに囲まれた職場に毎日通い、パソコンと向き合っている身からすれば、登頂時はさぞかし爽快で達成感に満ちているのだろうと、勝手に憧れる。標高8千メートルを超える頂となれば、なおさらだ。
2001年、23歳の時に中国・チベット側からエベレストに初登頂した写真家・石川直樹はその後もローツェやマカルーといった8千メートル峰に通い、写真に収めてきた。本書では、19年に1人のシェルパと出会ったことをきっかけに、世界に14座ある8千メートル峰の完全登頂を意識するようになった石川が、目標を達成するまでの過程を描く。
その記録は...
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