1960年代は宇宙開発の競争が激しかった。61年に旧ソ連が有人宇宙飛行に成功すると、米国も負けじと69年に人類初の月面着陸を成し遂げた
▼宇宙への関心は、もちろん日本でも高まった。それに応えるように米国の航空宇宙評論家が書いたものが日本に紹介されていた。その中に宇宙船内の「ごみ」処理についての一文がある。処理のためにヤギの乗船を推薦した科学者がいた、とある
▼どこまで本気だったか定かではないが、あまり好き嫌いのないヤギにごみを食べてもらおうとの話らしい。この発想に対しては、宇宙船という小さな空間での人との共存は難しい、との論評が載っている
▼もし実現したならば、無重力の船内でヤギはうまく食事できたろうか。しかし代わる妙案がないのも事実だろう。人がいればどうしたって、ごみは出る。時代が進んでもごみをゼロにする画期的な策は見えてこない
▼家庭ごみなどを扱う国内の処分場は、あと25年ぐらいでいっぱいになるとの推計がある。あふれないようにするには、新たな埋め立て地を整備し続けなければならない。ごみの抑制にしっかり励まないと、国土が狭い日本にはつらいことになる
▼このごろ日本が打ち上げる無人補給機の大切な任務の一つは国際宇宙ステーションからのごみ回収になっている。衣類などの不用品を積み込んで大気圏に突入すると、大半が燃え尽きる。大胆な焼却処分だ。いっそのこと地上のごみ全て宇宙に運んで…なんていう未来は避けたいものだ。
