不定期放送なので、視聴するのはいつもたまたま。なのに吸い寄せられるように見ている。NHKのテレビ番組「病院ラジオ」は、お笑いコンビのサンドウィッチマンが各地の病院を訪ねる企画だ。闘病している患者やその家族らの話に耳を傾ける
▼好感度を測るビデオリサーチ社のイメージ調査男性部門で、このコンビが大谷翔平選手らを抑えて14連覇していることに納得がいく。深刻で切実な事情を抱える人と向き合うときの距離感に敬服する。東日本大震災の被災地でもそうだった
▼言葉や表情にわざとらしさがない。果てしなく沈んでいきかねない話題にも淡々とユーモアをまぶした言葉で応じ、笑顔を引き出す。見る側は泣きながら笑ってしまう
▼言葉の力を思う。その影響力にたじろいだのは先日、新潟市で開かれた公的扶助研究全国セミナーでのこと。生活保護受給家庭で育った20代女性が、精神疾患のある母親との2人暮らしを語った
▼幼少期からあらゆる辛抱を重ねて母を支えてきたという。ある夜、パニック障害で救急搬送された病院に付き添った。そこで言われた。「もっとお母さんの面倒見てあげなよ」。無理解が胸を刺した。自分の存在を否定された気がした
▼かといえば、こんな日も。役所で平静を失った母親が大声を出した。職員が女性にささやいた。「大丈夫だよ。みんな分かってるから。大変だったね」。温かかった。「言葉は人を殺しもするし、人を明るく照らして救いもする」。女性はそう語っていた。
