「私いつ寝るの?」。最初の子どもが生まれた頃は掛かりきりになり、毎日翻弄されっ放しだったという。糸魚川市出身のタレント横澤夏子さんが以前、芸人仲間のくわばたりえさんのユーチューブ番組で振り返っていた

▼子どもの泣き声が自分を責めているように聞こえたそうだ。「生きた心地がしなかった」「ずっと泣いていた」。どんどん追い詰められていった。育児は夫とある程度は分担したが、心が晴れることはなかった

▼横澤さんは「人に頼るのが苦手」な性分で、産後のケアを担当する助産師らにも、なかなか心を開けなかったようだ。母親ばかりが子育てを背負うのでなく、社会全体で担えるようにと言われて久しいが、孤立感を深める母親はまだまだ多いのだろう

▼赤ちゃんを育てる人を支える取り組みが、先日の紙面で相次いで紹介されていた。一つは新潟市西蒲区にオープンした、夜泣きに悩む母親が駆け込めるカフェ。毎週水曜に夜通し営業し、ボランティアのスタッフに育児相談をすることもできる

▼もう一つは三条市の助産院が始めた「赤ちゃん食堂」。赤ちゃん用と大人用のメニューを用意し、子ども連れでもゆったりと食事できる。親同士のつながりを深めるきっかけにもしてもらう

▼いずれも、子育て中の人を孤立させないようにする取り組みだ。暗闇に閉ざされたと感じる人にとっては、小さな明かりも心を温めてくれるはず。頼れる人がいる、頼れる場所がある-。そんな安心感を一人でも多くの人に。