死去からおよそ3年3カ月、昨日はくしくも安倍晋三元首相がクローズアップされる一日になった。在りし日をしのんだ人も多いだろうか

▼長い公判前手続きを経て、安倍氏銃撃事件が初公判を迎えた。片や、高市早苗首相とトランプ米大統領による初の対面会談は、互いに安倍氏を懐かしむ言葉を交わし距離を縮めた

▼銃撃事件が類のない衝撃的な事件だったことも、安倍氏が対トランプ外交で手腕を発揮したことも、間違いない。改めて安倍氏が一時代を象徴する政治家だったと印象づけられる。ただ私たちは「安倍晋三」というキーワードのさらにその先に目を向けるべきなのだろう

▼銃撃事件の裁判では被告が安倍氏を標的にした経緯を解き明かさなければならないが、背景をたどれば、安倍氏個人というより自民党と旧統一教会との関係性に行き着く。まだまだクリアにすべきことは残る

▼日米同盟は日本外交の基軸であり続けるものの、トランプ氏が国際協調の軽視を強める中、むやみな米国追従は立ち止まる時期ではないか。安倍氏の親密路線を継承しトランプ氏の機嫌取りに心を砕くのが、果たして最良の選択なのか

▼一方で、理屈もヘチマもなく、すがりつけるのならすがりつきたい問題もある。膠着(こうちゃく)状態が続く北朝鮮の拉致問題は、異能の人の突破力に期待するところは大きい。トランプ氏は拉致問題について「常に心の中にある」と語っていた。局面の打開に導いたとしたら、ノーベル平和賞も喜んで推薦したいのだが。

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