「高市早苗首相の政権がうまく続くといいですね」。先日、韓国の新聞記者に言われ、少し驚いた。保守色の強い高市さんの首相就任を、韓国側は警戒していると思っていたからだ
▼「朴(パク)槿恵(クネ)政権はあんな終わり方でしたから」と続き、ふに落ちた。こう言ったのは女性の記者である。韓国では2013年、朴さんが女性として初めて大統領に就いた。しかし、任期を全うすることなく、17年に弾劾されてその地位を追われた
▼弾劾後、韓国内の一部で「やっぱり女性には任せられない」という声が上がったという。弾劾された罪状と性別は関係なかったはずだ。残念な風潮だと先の記者は話す。だからこそ、高市さんの今後に注目しているのだという
▼スイスのシンクタンクが各国の男女平等度を比べるジェンダー・ギャップ指数で、日韓両国は低迷する。148カ国を対象とした25年版では、一足先に政治のトップに女性を置いた韓国は101位、日本は118位にとどまった
▼韓国初の女性大統領就任から10年余りが過ぎ、日本にも女性首相が誕生した。ただ、それだけで政治の風景が大きく変わったわけではない。両国とも国会は圧倒的に男性多数の状況が続く。それでも日韓両国で「ガラスの天井」を破ったことは大きな意義があると信じたい
▼この言葉が死語になる日が来たらいい。先人の後ろ姿に勇気をもらい、そこかしこにあるガラスの天井に、まずはひっかき傷でも付けてみようか…なんて、思う女性が次々に現れるといい。
