取材に応じる社会学者の大沢真幸さん
 取材に応じる社会学者の大沢真幸さん
 取材に応じる社会学者の大沢真幸さん

 知人の劇団公演を見るために8月に大阪・関西万博会場を訪れた。各パビリオンは芸術的価値があり、面白い試みもあったが、全体では国民にとって歴史的記憶として残る出来事になり損ねた。

 1970年大阪万博は、戦後日本の精神史を象徴する祭典だった。浦沢直樹氏が漫画「20世紀少年」で描いたように、万博に行けなかったことが人生の悔いになるほどだった。歴史的出来事は、その場にいない人も参加意識を持つ。今回は関西と他の地域で極端に熱量の差があった。

 「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマが空虚に響いた。1970年万博の「人類の進歩と調和」が時代精神の核を捉えたのは、当時の人々が進歩を信じていたからだ。今の...

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