「失われたバンクシー」
 「失われたバンクシー」

 パレスチナの建物の壁に描かれた、火災瓶の代わりに花束を投げようとしている覆面姿の男。ベネチアの運河沿いの建物に描かれ、水位の上昇で消えつつある移民の子ども。正体不明の芸術家バンクシーの作品は、政治や社会への鋭い洞察を基にした風刺が込められ、突如出現しては注目を集めてきた。

 一方、作品の大半は、清掃員による毀損や、建物の解体、アートディーラーによる「保護」を目的とした撤去、ライバルのアーティストとの確執による破壊などの理由で失われているという。本書は、姿を消した主要作品のうち約50点について、一つ一つがどのように生み出され、撤去され、その後どんな運命をたどったのかを、関係者への粘り強い取材で明...

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