寒空の下に焼け出された人たちはどれほど不安な気持ちでいるだろうか。まずは被災者のケアを最優先にしてほしい。

 寒さが厳しくなる冬は火を使う機会が増える。私たち一人一人が防火意識を高め、対策を徹底しなければならない。

 大分市佐賀関で大規模火災が18日に発生し、住宅など170棟以上が焼失して焼損範囲は約4万8900平方メートルに及んだ。1人が遺体で見つかり、1人が軽いけがを負った。

 周辺の山林10カ所程度が焼けたほか、現場から約1・4キロメートル離れた無人島にも延焼した。

 2016年12月に糸魚川市で起きた大火を思い出す。フェーン現象に伴う強い南風にあおられ、住宅密集地で被害が広がり、147棟が焼失した。

 糸魚川市では、鎮火までに約30時間を要したが、今回は数日かかるとみられている。消火活動に全力を挙げてもらいたい。

 大分市の避難所には多いときで180人が身を寄せた。突然、自宅を失った衝撃は大きいはずだ。

 県と市が被災者向けの住まいや食事を提供するという。避難した人たちが、安心できる場所で心身を休められるよう支えたい。

 深刻な被害となった要因の一つとして指摘されるのが気象条件だ。現場周辺では強風注意報が発表されていた。14日以降、雨も降っておらず、19日には乾燥注意報も出された。

 この地域は半島の先端で、強風が吹いていた可能性が高いという。「全方向に風が吹き、飛び火がすごかった」との証言もあった。

 消火も難航した。現場は木造住宅が密集して道幅が狭く、消防車が入れないなど、消火活動のためのスペースが確保できなかったという。この地域には空き家も多かったとされる。

 木造住宅が密集する地域は全国どこにでもある。火事を出さないよう注意し、火災警報器や消火器の設置といった対策を進めたい。

 専門家は、初期消火の重要性を強調する。ただ、人口減や高齢化が進む中、迅速に消火活動ができないケースもあるだろう。

 初期消火を個人に委ねるのではなく、地域で行う意識を持ち、体制を整える必要がある。いざというときの対応や避難ルートなどを地域で話し合ってほしい。

 火災が鎮火すれば、次は復旧・復興に向けた取り組みが始まる。糸魚川市の経験も伝えたい。