停戦が発効したにもかかわらず、人道危機により依然として多くの人が苦しんでいる。安全に安心して暮らせるよう、国際社会は結束し、早急に和平計画を進めていかねばならない。

 国連安全保障理事会は、パレスチナ自治区ガザの治安維持を担う国際安定化部隊(ISF)の設置など、トランプ米大統領が主導するガザの和平計画を支持する決議を採択した。

 これにより、20項目から成る計画が国際社会で法的拘束力を持つことになった。

 既に計画の「第1段階」として、イスラム組織ハマスは生存している人質の解放と遺体の引き渡しを進めた。イスラエルは拘束していたパレスチナ人を解放した。

 しかし、イスラエル軍が散発的に攻撃を続けている。ガザ保健当局は、10月10日の停戦発効後の死者は260人以上としている。

 和平計画を形骸化させ、頓挫させかねない蛮行だ。これ以上繰り返してはならない。

 決議はISFのほか、ガザを暫定的に統治する国際機関「平和評議会」の創設が柱となる。ハマスの武装解除なども盛り込まれた。

 提案した米国は、決議が「第2段階」への移行の後押しになることを期待する。

 とはいえ課題は山積し、難航する懸念がある。

 平和評議会は、トランプ氏がトップを務めるとみられるが、ほかのメンバーや意思決定の仕組み、責任の所在といった根幹部分が決まっていない。

 ISFへの参加国も未定だ。早急に細部を詰めねばならない。

 難航必至とされるのがハマスの武装解除だ。ハマスは、イスラエルが占領する限り、抵抗は「正当な権利だ」と訴えている。

 決議に対しても、パレスチナ人の要求と権利を満たしていないとして拒否した。

 また、決議は条件次第でパレスチナ国家樹立に向けた道筋が整う可能性を盛り込んだが、イスラエル側が難色を示している。

 米国を中心に関係国は、イスラエル、ハマス双方が納得する着地点を見い出す努力が欠かせない。

 日本政府は、ガザの人道状況改善や復旧・復興支援に加え、暫定的な統治機構に人材を派遣する意向だ。日本ならではの支援策を探ってもらいたい。

 ガザでは、停戦発効から1カ月以上たっても、100万人余りが仮設の避難所での生活を強いられているとの推計を、国連人道問題調整室が発表した。

 本格的な冬の到来が近づき、人道状況の一層の悪化が心配される。大雨で数千のテントが壊れ、支援物資など援助へのアクセスが限られている人も多い。

 和平計画を着実に履行し、ガザの安定を一日も早く実現しなければならない。