米国の高関税政策の悪影響を如実に示したと言えよう。世界経済には依然として不透明感が漂っている。政府には、企業活動や個人消費を下支えする実効性ある政策が求められる。

 2025年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値が発表され、物価変動の影響を除く実質で前期比0・4%減、年率換算は1・8%減だった。

 マイナス成長となったのは、24年1~3月期以来、6四半期(1年半)ぶりである。

 輸出は1・2%減だった。自動車を中心に不振で、米国の高関税の影響が表面化した。

 日米合意に基づき、米国が日本からの輸入車にかける関税は9月に27・5%から15%に下がった。影響は徐々に緩和されていく可能性が高い。

 ただし、トランプ政権発足時の2・5%に比べると6倍の高水準で、自動車大手や部品メーカーの業績の打撃となっている。

 生産設備の自動化や省力化を図り、高関税下であっても利益を上げられる体質に改善することが課題となるだろう。

 住宅投資は4月に省エネ基準への適合が義務化されたことに伴う駆け込み着工の反動で9・4%減の大幅マイナスだった。

 企業などの設備投資は1・0%増で、人手不足を補うための人工知能(AI)関連などが引き続き伸びている。

 個人消費は0・1%増で、猛暑の影響で酒類を含む飲料が好調だった。夏休み期間の航空や鉄道など旅客需要も増えた。

 しかし、コメや肉類、魚類の消費は減少したほか、自動車購入も低調だった。

 賃上げがまだ物価高に追いついていないため、消費者の節約志向によって伸び悩んだと見ることができよう。

 今後、外国為替相場で円安ドル高が続けば、輸入物価を押し上げ、家計のさらなる負担増となる。

 城内実経済財政担当相は談話で「景気が緩やかに回復しているとの認識に変化はない」と表明し、戦略的な財政出動で力強い経済を構築するとした。

 政府には物価高対応を柱とした経済対策の策定を急いでほしい。

 懸念されるのは、高市早苗首相の台湾有事に関する国会答弁をきっかけに、日中関係が緊迫化していることである。

 中国政府が国民に日本への渡航自粛を呼びかけ、中国の複数の大手旅行会社が日本への旅行の販売を停止した。

 大規模な反日デモが起きた12年の尖閣問題では、中国からの年間の訪日客数が25%減った。小売りや観光業への影響が広がれば、GDPを押し下げる。

 日中間の経済交流を阻害しないためにも、事態の沈静化を急がなければならない。