
「無理して頑張らなくても」
誰にどう話していいかも分からないような「冷たいトゲ」が心に刺さって、後になって痛み出すことがある。本書に収録された14編は、そんな体験を抱える人たちの物語。そっと打ち明けられる心の内に、静かに耳を傾けるような短編集だ。
表題作の主人公は高校生の女の子。母親がカルト教団に入信して家に帰らなくなり、転校を余儀なくされた。クラスになじめずにいたところ、社交的な人気者のユナに声をかけられる。「軽く見られないよう」に無理して頑張り、秘密を打ち明けることでユナに「認められた」と感じていた。
主人公は大人になり、ユナに裏の顔があったことを知る。そして秘密を巡る記憶がよみがえり、自分には「ずっと前に流すべき...
残り506文字(全文:806文字)











