これまでに出版した雑誌「コトノネ」と里見喜久夫さん=10月、東京都目黒区
 これまでに出版した雑誌「コトノネ」と里見喜久夫さん=10月、東京都目黒区
 記事に登場する人たちのさまざまな表情が印象的な「コトノネ」の表紙
 「コトノネ」最終号を手に「障害者のことを取材していたら、世界が広がった。得をした」と話す里見喜久夫さん=11月、東京都目黒区
 「コトノネ」の最終56号
 「コトノネ」編集部が入る事務所に立つ里見喜久夫さん=11月、東京都目黒区

 東京都内でデザイン会社を経営していた里見喜久夫さん(77)が、「コトノネ」という雑誌を作り始めたのは63歳のときだった。「障害者施設を応援する雑誌を作ってほしい」。東日本大震災の被災地で知り合った福祉関係者から頼まれて始めたのだが、「それまで障害者のことなんて、何も知らない素人だった」里見さん。「3年程度でやめよう」と思っていた。

 創刊から2年ほどたった頃。取材中、たまたま障害者のつばが里見さんの手の甲に落ちた。嫌悪感が走った。でも、拭うのもはばかれる。固まった。そのとき思った。「好きでもないのに、なんでこんなことをやっているのか」

 それから10年余り。雑誌はしかし刊行を続け、11月に最終号...

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