降っては晴れて、また降って。本格的な冬には少し早い今時分、時雨が気まぐれに街をぬらす。一雨ごとに寒さが増す。いずれみぞれに変わるのだろう
▼先日、短い晴れ間に虹を見た。日本海側では時雨の時季に一番虹が出やすい。不安定な天気と表裏一体のごほうびか。心が弾み、スマートフォンのカメラに収めた
▼虹に巡らす思いは古今東西で異なる。ギリシャ神話に登場する虹の女神イリスは神々のメッセージを運ぶ。中国では古くは災難の前兆だった。現在の米国などでは、性的少数者のパレードで虹色の旗が多様性の象徴として掲げられる
▼色の数え方も違う。日本は赤、橙(だいだい)、黄、緑、青、藍、紫の7色だが、英米は藍のない6色だ。中国ではより少ない5色と見る人もいる(杉山久仁彦「図説虹の文化史」)。気象現象一つでも国の違いは大きい。まして政治である
▼高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁を発端に、日中間に摩擦が生じている。中国が「核心的利益の核心」とする問題に触れる重さを量り損ねたのだろうか。閣内にも不用意との指摘がある。中国の反発も過剰だ。根拠を示さず日本の治安が悪化しているとして、国民に日本への渡航や留学の自粛を呼びかけた
▼答弁撤回を拒む日本との対立は長期化の様相で、米大統領にとっても無視できない事態となった。日中関係は荒天下にある。再び交流の橋を虹のように架けるのか、それとも虹のごとくはかなく消してしまうのか-。後者を選択するわけにはいかない。
