貴金属の「金」が人を引きつけるのは、輝きの魅力だけではない。資産としての魅力が大きいのだろう。価格は上昇傾向にあったが、先日急落した。浮き沈みが怖い
▼かつて純金ブームを巻き起こした「ふるさと創生事業」が頭をよぎる。あれは1988年ごろ、政府が全国の自治体に自由に使える1億円を配った。純金の何かを作った自治体がいくつかあった
▼例えば青森県のある市は1億円で純金こけしを制作した。観光名物として人気を集めた後の2007年、市の財政難を救うため入札にかけられた。結果は2億円弱での落札だったというからホクホクだろう
▼悲運だったのは高知県のある町が作った純金カツオだ。一本釣りが盛んな町を紹介するのに創生資金が充てられた。1年間の展示後に売られ、人手を介して行き着いたのは県立の記念館。ここで1993年、盗難に遭う。被害額は6千万円相当と報道された
▼1億円からだいぶ目減りしている。相場が下落していただけでなく、カツオの中身がくりぬかれていたからだ。県が十分な購入額を用意できなかったため、目立たぬ所で金の量を減らしたとの説があるが真偽は不明。そして盗難後は溶かされ、800万円で売りさばかれていた
▼純金製でなければこんな運命はたどらなかったろう。しかし、高値が幸せとも言えない。「安定資産」と呼ばれる金は、往々にして戦争のような情勢不安を受けて高くなる。あの黄金の色が不穏な世相を映すとは。悲しい色にも見えてくる。
