スポーツは敗者にこそドラマがある-。言い古されたフレーズだが、冬季五輪では多くの名場面が思い浮かぶ。勝者よりも深く脳裏に刻まれた選手もいる

▼1984年のサラエボ大会。スピードスケート男子でメダルの期待を一身に背負ったのが黒岩彰さんだった。だが、悪天候で競技のスタートが5時間遅れるなど不運が重なる。滑りも後半に乱れて精彩を欠き、得意の500メートルは10位に沈んだ

▼同じ種目で伏兵の北沢欣浩さんが銀メダルを獲得したことで、黒岩さんの不振が際立った。「プレッシャーに弱い黒岩」という不名誉な評価が、しばらく付いて回った

▼94年のリレハンメル大会では、スキーのジャンプ団体で原田雅彦さんが最後にまさかの失敗。手中に収めかけた金メダルを逃し、原田さんがしゃがみ込む姿とともに「失速」が流行語のようになった。ただ2人はこのままでは終わらなかった。黒岩さんは4年後の五輪で銅を獲得した。原田さんも98年長野大会で再びジャンプ団体に出て金を手にし、大きな感動を呼んだ

▼フィギュアスケートでは、2014年ソチ大会の浅田真央さんの姿が忘れられない。ショートプログラムはミスが続き16位。それでもフリーでは高難度のジャンプを連続で決め、演技を終えた瞬間に涙があふれた

▼ミラノ・コルティナ冬季五輪が開幕する。浅田さんに憧れてフィギュアを始めた17歳の中井亜美選手ら7人の県勢が挑む。全力で競技する選手が放つ、勝敗を超越した輝きを目に焼き付けたい。