鈴木牧之が北越雪譜を著したのは江戸時代後期のこと。〈(雪を)掘(ほら)ざれば家の用路を塞(ふさ)ぎ、人家を埋(うづめ)て人の出(いづ)べき処(ところ)もなく、力強(つよき)家も幾万斤(いくまんきん)の雪の重量(おもさ)に推砕(おしくだかれ)んをおそるる〉。雪のリスクを記し、人間の無力もつづる。〈此(この)雪いくばくの力をつひやし、いくばくの銭を費(つひや)し、終日ほりたる跡へその夜大雪降り、夜明(あけ)て見れば元のごとし〉

▼文明が発達し近代化しても、雪国暮らしの本質は変わらない、そう気付かされる。今季最強で最長と言われた1月末の寒波を経て、積雪が2メートルを超えた山沿いの地を先週末に訪ねた

▼飽きずに雪は降り続いた。雪掘りにいそしむ人をあちこちで見かけた。積もった雪が滑り落ちる自然落下式の屋根が主流になったとはいえ、カリフラワーのように雪をかぶった家も目に付く

▼わが実家もその一つ。業者に雪下ろしを頼むにも人手不足でままならないと聞く。「手伝ってやるよ」と駆けつけてくれた友人がいなければ、途方に暮れていた。大屋根を下ろし、小屋根を下ろし、地面の雪と屋根のくっつきを切り離す。丸二日かかった

▼除雪中の死亡事故が後を絶たない。十日町で流雪溝に2人が流された。上越では除雪車にはねられた。屋根からの転落、落雪の下敷き、除雪中の体調急変…。大雪が引き起こす惨禍が悔しい

▼温暖化が極端なドカ雪を降らせ、人口減少と高齢化で深刻度は増す。雪対策は古くて新しい問題である。政治課題として捉えるべきではないか。衆院選のただ中、その思いを強くする。