人口減少時代に必要な人材は「面倒くさい人」なのだと聞けば、なんだか喜ばしくもないように思えたが、言い換えると「社会の常識や普通に疑問を抱ける人」だというから、ほっとして納得した

▼持論の語り主は、社員二十数人の企業ながら、ロケット開発で注目される北海道の植松電機を経営する植松努さんだ。新潟国際情報大主催の講演を先日、新潟市内で聞いた。ユニークで経営者らしい発想だった

▼人口が増える社会の成長期は物が足りなくなる。だから成功例をまねてでも大量に提供できればもうかった。結果的に「同じ」「普通」「前例がある」が正しい選択に見えたという

▼物が余る人口減少期は、他社と同じことをしていれば安売り合戦になるだけで企業は疲弊する。教えられたことを忠実に繰り返せる人よりも、新しい価値を生み出す人が必要とされる。その担い手を面倒くさい人と表現した

▼植松さんは、無理だと否定されたロケット開発に挑み続け、失敗を重ねた末、打ち上げばかりか人工衛星を丸ごと造れるようにもなった。そんな経験を下地に、奇跡を起こせるのは過去の常識の延長で考えない「前向きな素人」だと語った

▼評論家の外山滋比古さんは名著「思考の整理学」で日本の学校は、エンジンを備えて自由に飛べる飛行機ではなく、自力飛行を求められないグライダーの訓練所だと比喩していた。植松さんはといえば「学校の勉強は全然ダメだった。中学生のときには学校へ行けなくなった」のだそうだ。

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