
遠藤乾さん
英国やフランスに「prudence」という言葉がある。もとはラテン語の「prudentia」で、原義は先々まできちんと見通すことである。そこから倹約、慎重、抜け目なさなどさまざまな意味が派生する。
これは外交安全保障の世界で長らく重んじられた価値で、しばしば「慎慮」と訳される。力の配置や移行を見極め、自国の利益の在りかを考え抜き、規範を味方につけていく。戦後フランスを代表する知識人レイモン・アロンは、外交安保における慎慮の大切さを説いてやまなかった。
日本は身の丈の維持に腐心する大国だ。米中韓その他の国は日本を無視はできない。だが、独りで世界を自国に有利に運べるほどの力はない。それなりの武力...
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