またしても、政治とカネを巡る疑惑が浮上した。政治資金の不適切な支出も相次いでいる。
国民の政治への信頼を取り戻すには、政治資金規正法の抜け穴を許さない形に整える必要がある。与野党は議論を急ぐべきだ。
無所属の松原仁衆院議員の資金管理団体が、2021~24年に、最大三つの関連政治団体を経由して弁護士ら4人から規正法の上限を実質的に超える個人献金を受けていたことが分かった。
規正法は、個人による資金管理団体などへの寄付上限を1団体につき150万円と規定している。今回の4人のうち1人は総額年600万円を寄付していた。
政治資金収支報告書によると、松原氏の資金管理団体「東京未来の会」は24年9月13日に弁護士から150万円を受領した。同じ日に松原氏に関連する3団体もそれぞれ150万円を受け取り、同日に資金管理団体に移した。
この4団体は所在地が同じで会計責任者も同じ人物が務める。問題の寄付以外に収支がない団体もあり、実態がないと疑われる。
「露骨な迂回(うかい)献金だ」とする専門家の指摘はもっともだ。献金が24年までの4年にわたり続けられたことも悪質だといえる。
松原氏の事務所は適法な寄付だと主張する。有権者が納得できるよう説明を尽くすべきだ。
過去には日本歯科医師連盟が同様の構図で迂回献金をし、元会長らの有罪が確定した。一審の東京地裁判決は「政治活動の公明と公正を確保しようとする法の趣旨を軽視した」と指弾した。
にもかかわらず同じような事案が発生した。不祥事の度に対症療法しかせず、抜本的な対応をしてこなかった国会の責任は重い。
自民党派閥裏金事件以降、企業・団体献金の在り方が議論されてきた。個人献金も含め、寄付の受け皿となる団体を限定することなどを検討する必要がある。
政治資金を巡っては、上野賢一郎厚生労働相の資金管理団体が23、24年にスナックに「打ち合わせ飲食代」として計約31万円超を計上していたことが発覚した。
自民党の府県連や日本維新の会の複数の議員も同様の支出を行っていたことが明らかになった。
規正法は政治資金の使途を原則制限していないが、税制上の優遇措置を受ける政治団体がこうした支出を行うことに、国民の理解は得られない。
政治家は政治とカネに対して国民から厳しい目が向けられていることを自覚してもらいたい。
そもそも昨年の臨時国会で折り合えず、今年3月までに結論を出すとしながら、17日に閉会した臨時国会でまたも企業・団体献金の在り方を巡る協議が棚上げされたことは、大きな問題だ。
与野党は来年の通常国会で結論を出さねばならない。
